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・零戦搭乗員会「海軍戦闘機隊史」より
第二章 海軍戦闘機隊の栄光と苦闘
海軍の作戦面を担当する軍令部は、仮想敵国の軍備と戦略の構想の情報に基づいて、これに対応し得る飛行機の機種、特性、性能、装備等を検討して、その開発を海軍省に要求する。海軍省の部局である航本はこれを受け手、用兵、技術上の意見をそれぞれ横空、航空廠から聴取し、技術上の意見をそれぞれ横空、航空廠から聴取し、技術については必要ならば、発注予定の会社の技術者からも、意見を聞き案を練った上、実現可能と思われる最上限の線で、「計画要求書案」を作成して会社に内示する。
この段階までに、既に相当の討議を重ねているが、さらに検討を加えた上、航空本部長の名をもって「計画要求書」として正式に会社に交付発注する。会社では最初に意見を聞かれた時点から、設計の腹案を立て始めているが、その後官民合同研究会等を経て、細部にわたる具体的な「計画説明書」を提出して、造ろうとする飛行機の承認を求めるのが例であった。
以後、会社は本格的設計作業を始めるが、その艦でも航本、航空廠と緊密に連絡して、遺憾のないようにした。試作機は航空省の規定した「飛行機計画要領書」に基づいて制作され、「飛行機審査規則」で審査された。
審査項目の主なものは次のとおりで、航空省の担当であるが、一部には横空も参加した。
イ、 計画一般
ロ、 木型
ハ、 図面
ニ、 構造
ホ、 強度
ヘ、 完成
ト、 飛行実験
飛行実験審査は海軍に領収された後の飛行試験を指し、これを性能試験と実用試験に分けた。前者は飛行実験部が実施するもので、海軍の要求する諸性能を満足し、安全に飛行できるかどうかを審査する。後者は横空が行うもので、戦闘状況の飛行で、海軍の必要とする作戦任務に耐え得るか否かを審査するものである。
こうして以上の審査に全部合格すると、制式機として兵器に採用されることになる。一般に計画要求書が会社に渡されてから、三年前後の期間を経て制式機になった。しかし機体の手直し、発動機の不調、換装等により、それ以上の年月を要したものもあったし、性能が要求に満たないため、採用されなかった飛行機もあった。
以上は飛行機の開発計画が制度化した、昭和七年頃以降の様子であるが、それ以前は民間会社が独自に設計試作して、軍に売り込んだ飛行機もあった。
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